そんなに給付金出して、日本は大丈夫なのか? コロナ時の予算から考える。

あるお客様との会話で、国から支給されるコロナ関連の給付金や支援金の話になりました。

その方は、わずかな年金暮らしでささやかな生活を送っていますが、現役時代に築いた資産があり、不安の少ない日々を送っています。

ふと私の顔を見て、こうおっしゃいました。

「私みたいに困っていない家庭にまで給付金配って、日本は大丈夫かね?

答えに詰まりました。

日本の予算を見れば、とても大丈夫とは言えないからです。

どれだけすごいか、見てみましょう。

「102兆円」に達した2020年度本予算

すごさを実感するために、コロナ禍が始まった2020年の予算を振り返ってみます。

日本で初めてコロナ患者が見つかってから約3か月後の2020年3月。

国会で令和2年度本予算が政府案通りに成立しました。

歳出額(国の支出合計)は102兆6,580億円

前年と同じく100兆円の大台突破、過去最高額です。

この時予算が組まれた目玉政策には、2020年4月から始まった「高等教育無償化」(+4,882億円)や「幼児教育の無償化」(+1,878億円)、2019年10月の消費税増税対策として「キャッシュレス・ポイント還元事業」(+2,703億円)などがありました。

しかし、2020年度の予算はこれだけでは終わりません。

ここから「コロナ関連費」の怒涛の上積みが始まります。

本予算成立からわずか1か月で、25%の予算上積み。

コロナ対策はまったなし。

そこで政府は、本予算が成立して早々、異例のスピードで「第一次補正予算」を国会で成立させます。

その補正予算額は25兆6,914億円

当初予算の25%が、わずか本予算成立から1か月で上積みとなる、異例の早さでした。

この時予算に組まれたのが、支給方法で揉めに揉めた、国民一人当たり10万円の「特別定額給付金」(+128,803億円)です。 

また、後に菅元首相への批判が殺到した「Go Toキャンペーン事業」(+16,790億円)なども含まれていました。

計3回の補正予算で、予算は当初から7割増。

コロナの蔓延と緊急事態宣言の中、さらに予算は上積みされます。

この年の補正予算は、第2次(6月)、第3次(翌年1月)と続きました。

その結果、最終的な本予算は175兆6,877億円。

当初予算から71%もの大幅な増加です。

ここまで増加した予算は、過去例がありません。

例えば、戦費が莫大にかさんだ太平洋戦争時(昭和16年~昭和20年)でさえ、当初予算からの増加率は49%です。(昭和17年)

「補正予算」は何でもあり?

ここで疑問が生じます。

コロナ禍とはいえ、一度決めた本予算にここまで莫大な補正予算を積み上げてよいものなのでしょうか。 

そのヒントは「補正予算の定義」に隠れています。

まず、補正予算の根拠法である「財政法」の定義を見てみましょう。

【財政法第二十九条】

内閣は、次に掲げる場合に限り、予算作成の手続に準じ、補正予算を作成し、これを国会に提出することができる。
一 法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となつた経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。)又は債務の負担を行なうため必要な予算の追加を行なう場合
(以下略)

つまり、補正予算とは、「特に緊要になった経費の支出」があったら本予算に追加するもの、と規定しています。

しかし、予算編成の主管庁である財務省の定義は違います。

予算作成後の事情の変更によって、その予算に不足を生じた場合、また予算の内容を変える必要が生じた場合に、出来上がった予算を変更する予算。

出典: 財務省HP

こちらでは、補正予算とは「予算が足りなくなったり、変える必要があるとき」追加する予算、と定義しています。

「予算が足りなくなったり、変える必要があるとき」であれば、政治家や官僚によってどうにでも解釈が可能です。

足りないんだから入れろ!」と言えば予算が追加できてしまう怖さを感じます。

コロナ禍で一気に莫大となった「予備費」

実際、補正予算には「足りなくなったから入れた」と思われても仕方ない費用も含まれています。

それが「予備費」です。

予備費とは、日本国憲法に規定された、緊急時に使うことができる経費です。

性質は補正予算と似ていますが、大きな違いは「国会の承認なしに内閣が使うことができる」点です。

この予備費、補正予算に追加された額は莫大です。

2020年度は、コロナ対策予備費として計11兆5000億円

今年(2022年度)は、コロナ・エネルギー対策予備費として計6兆2600億円

コロナ以前は1兆円かそれ以下だったことを考えると、異常な額です。

国会を通らない莫大な金額が内閣の一存で使えてしまうために、実際に何に使われたかの検証は困難です。

それでも日本は大丈夫なのか。

莫大な補正予算と、そこに含まれる予備費。

これだけでも、日本は本当に大丈夫か?、と思わせる威力があります。

そして、これらの財源はほぼ全て国債という名の借金。

その国債は日銀が購入してくれるので、国債の発行も容易です。

しかし、それが一体いつまで続くのでしょうか。

亡くなった元首相が発言したように、日銀は政府の言いなりでずっといられるのでしょうか。

予算は知れば知るほど、怖くなります。

やはり冒頭のお客様には、日本は大丈夫とは、とても言えません。

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