消費税のインボイス制度って、一体何?(ある声優のストーリー)

消費税の「インボイス制度」導入(2023年10月)まで、あと1年を切りました。

「え、【インボイス制度】って何?」 という方に向けて、ストーリー仕立てで「キホンのキ」を解説します。

インボイス制度を理解しているのはわずか14%。

消費税の「インボイス」制度を知らない、聞いたことがない。

もしそうであっても、恥ずかしいことではありません。

会計システム企業のfreeeが9月に実施したアンケートによれば、「インボイス」制度を理解している個人事業主はわずか14%。

無理もありません。

制度の中身が複雑なのですから。

しかし、知らないで済ますことはお勧めしません。

なぜなら、自身の収入が減ることにつながりかねない制度だからです。

そのため、例えば声優・アニメーター業界農業団体などから、さまざまな非難の声が上がっています。

そして、これを書いている私自身も、いずれは痛手を受けるかもしれない身です。

消費税インボイス制度が導入されると何が起こる?

消費税インボイス制度が導入されると、商品やサービスの買い手売り手双方に次のことが起こります。

買い手:

①「仕入税額控除」を受けるため、「買い手」は「売り手」から「インボイス」をもらう必要がある。

②「インボイス」がもらえないと、「買い手」は「売り手」を変えたり、実質値下げを要求する可能性がある。

 

売り手:

③「インボイス」を発行するために、「課税事業者」にならなければならない。

④「課税事業者」になると、それまで支払わずに済んだ、受け取った消費税を納税しなければならない。

ここでの「買い手」と「売り手」とは、例えば声優業界なら、

買い手:「所属事務所」

売り手:「声優」

農業なら、

買い手:「青果店」や「直売所」

売り手:「農家」

に当てはまります。

そして、フリーランスを始めとする、さまざまな個人、業界が反発しているのは、売り手における④の部分です。

ただし、これだけでは「何のこと?」だと思いますので、次に声優業界を例にとり、「所属事務所」と「声優」にどんな影響があるのか、を(架空の)ストーリー仕立てで見てみましょう。


「ある声優」のストーリー:インボイス制度が直撃する仕組み。

1.事務所から突然のメール

新人の声優Hさん(個人事業主)は、1クール半年の30分深夜アニメの吹き替えを所属事務所から紹介され、「待ってました!」とばかりに始めました。

報酬は、吹き替え1回あたり2万円(+消費税)。

所属事務所から月末に指定の口座に一か月分まとめて振り込まれる代わりに、請求書を作って送らなければなりません。

請求書の書き方もよく分からなかったHさん

所属事務所の経理担当者に教えてもらい、何とか請求書を作り上げ、メールで送信しました。

それからしばらくたったある日。

所属事務所からHさんを含む所属声優へ、こんな一斉メールが届きました。

税務署へ「適格請求書の発行事業者」になるための届け出をしてください。

「インボイス制度」?

一体「登録番号」とは何? 

どこで、どうしたら「登録番号」がもらえるの?

Hさんは同僚の声優と共に、慌てて事務所に駆け込みました。

2.「適格請求書」でもっと混乱。

事務所の経理部。

経理担当者は、こう答えました。

税務署へ「適格請求書の発行事業者」になるための届け出をしてください。

「適格請求書?」、「発行事業者?」

またしてもよく分からない言葉が出てきて混乱したHさん。

頭を冷やそうと廊下へ出たところに、助け船が。

Hさんを可愛がっているベテラン声優Bさんが通りかかりました。

思い切って相談すると、Bさんはため息をつきながら、こう切り出しました。

3.仕入税額控除とは?

Bさん

「つまり、こういうことだよ。」

「事務所が求めている【登録番号】とは、税務署が「この請求書は、消費税の申告上、適正に使えますよ」というお墨付きみたいなものだ。」

「そしてこのお墨付き、つまり登録番号が記載された請求書だけが、事務所側で【仕入税額控除】に使えるんだ。」

Hさん:

仕入税額控除って何ですか?」

Bさん:

「事務所がアニメ制作会社からもらう売上金にかかる消費税から、俺たち声優に払う報酬にかかる消費税を差し引ける仕組みだよ。」

「たとえば、売上金にかかる消費税が100万円で、声優に払う報酬にかかる消費税が30万円なら、事務所が税務署に収める消費税は100万円-30万円=70万円で済むってことだ。」

4.今まで懐に入っていた消費税が、納税へ。

Hさん:

「なるほど。 じゃあ、ともかくこの【登録番号】を税務署でもらえばいいんですね?」

Bさん:

「いやいや、話はそう単純じゃない。」

「登録番号をもらうためには、Hくん自身が【課税事業者】にならなくてはならないんだ。」

Hさん:

課税事業者って、消費税が課税されるってことですか?」

Bさん:

「そういうことだ。」

「Hくんが毎月作る請求書の金額に、消費税が含まれていることは知っているよね。」

Hさん:

「は、はい(汗)。」(いつも言われた通りに作っているだけで、中身は細かく見ていない)

Bさん:

「その消費税、Hくんは税務署に申告したり、納税したりしてないだろ?」

Hさん:

「してないです。」

Bさん:

「もし【登録番号】をもらうために課税事業者になれば、Hくんの懐に入っていた消費税を、毎年納税しなければならなくなるぞ。

Hさん:

「え! ただでさえ少ない報酬が、さらに減るじゃないですか!」

「これ、断れないんですか?」

Bさん:

「残念ながら事務所の方針で決まったもので、俺の力だけではどうしようもない。」

5.これ以上は勘弁!

Hさんはさっそく家に帰って、これまで作った請求書をかき集めて、これまで「受け取った」消費税を計算してみました。

すると、合計で約10万円。

Hさん:

「この10万円を、これからは納税しなければならないのか…」

Hさんは声優の仕事に加え、塾の講師の仕事も請け負っています。

幸い、今の所そちらからは「登録番号」のことは何も言われていませんが、こちらまで要請が来たらと思うと、ぞっとする思いです。

それから数日後、同僚と愚痴をこぼしているときに、やっと理解しました。

インボイスとは、日本語で「請求書」の意味だということ。

そして、消費税インボイス制度の「インボイス」とは、ただの請求書ではなく、「登録番号」が記載された請求書である、ということを。

インボイス制度は「弱者切り捨て」だけでは語れない

今回のストーリーでは、インボイス制度とは何か? そしてインボイス制度が導入されると何が起こるのか? を、「ある声優」の視点からできるだけ分かりやすくお伝えしたつもりです。

ただし、この制度の導入には、単に「弱者切り捨て」だけでは語れない背景があります。 

この問題については、また別のブログで書きたいと思います。

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