勤務を減らしたい。 不利にならないために何をチェックすればよい?
「結婚を機に、これまでの猛烈な働き方を見直したい。」
「子どものために、育児の時間をもっと取りたい。」
「留学するために、勉強のための時間を確保したい。」
こんな理由で、自分の時間をもっと増やしたい。
ただし長期間離れてしまうのではなく、一時的に勤務日数を減らしたり、勤務時間を短縮したい。
人生の転機を経る時、このように考える方は多いと思います。
「しかし、給与や社会保険など、不利な面もあるのではないか。」
そのように考えて二の足を踏む方も多いと思います。
そこで、勤務を減らす際に注意すべき点をまとめました。
勤務を減らす3つの手段
勤務を減らす方法としては、以下の選択肢が考えられます。
1.短時間正社員制度(育児・介護を含む)を利用する。
2.「非常勤」として働く
3.会社や人事部と交渉する。
1.短時間正社員制度を利用する。
「短時間正社員制度」とは、政府が推進する働き方改革の一つです。
もし勤務先で制度を導入しているようであれば、利用を検討するのがよいでしょう。
ただし、制度の内容は企業によって違いがあるため、短時間勤務の要件、内容や給与等への影響をしっかり確認するようにしてください。
以下は、確認するポイントです。
チェック1: 制度の対象となるか。
入社からの最低勤務年数や、利用回数の制限は満たしているか。
(例: 入社からの年数が1年未満では利用できない、など)
チェック2: 勤務の減らし方。
一週間のうち、勤務「日数」を減らすのか、それとも一日当たりの勤務「時間」を減らすのか。
または両方の組み合わせが可能なのか。
なお、「育児・介護休業法」に基づく育児よる時短勤務であれば、1日の労働時間を6時間とする、午後10時から午前5時までの労働はさせない、などの規制があります。
このような法律上の制限についても押さえておきましょう。
チェック3: 給与や賞与の減額割合。
給与は減った勤務日数や時間に比例して減るのか、それとも制度独自の計算方法によるのか。
賞与については、「基本給×〇ヵ月分」といった、通常勤務の社員と同じ計算方法で算出されるのか、それとも別途の計算方法があるのか。
チェック4: 諸手当への影響
通勤手当、食事手当、宿直手当、役職手当、扶養手当、住宅手当などの諸手当は、それぞれ減額されるのか、されないのか。
2.「非常勤」として働く
官庁や教育や医療機関、一般企業の中には、「常勤」、「非常勤」という区分で働き方が分かれている場合があります。
もし、「非常勤」という働き方を検討する場合は、「非常勤」の定義をしっかり確認しておく必要があります。
というのも、「非常勤」という働き方は法律に基づいたものではなく、組織によって定義に違いがあるからです。
たとえば、非常勤の勤務が「週5日8時間のフルタイム勤務」以外を指すのか、それとも「有期雇用」を指すのか。
フルタイム復帰後の働き方にも関わってくるため、「非常勤」とはどのような働き方なのかをしっかり確認した上で、自分の希望に合った働き方なのかを判断するようにしてください。
さらに、給与や賞与、諸手当への影響も確認しておきましょう。
3.会社や人事部と交渉する。
短時間正社員制度や非常勤などの仕組みが勤務先にない場合は、個別交渉となります。
上司などを経由して短時間勤務の要望を上げる場合、社内での検討にかなりの時間を要するので、余裕を持って希望を伝えるようにしてください。
ただし、慢性的に人手が足りていない、風通しの悪い社風であることを実感していると、短時間勤務を上司等に切り出すのは二の足を踏んでしまう、という方も多いと思います。
その場合、(私の経験上)自分の希望を上司等に伝えた上で、会社側にもこのようなメリットがある、とアピールすると話が通りやすくなります。
たとえば、短時間勤務を取り入れることで、自分のスキルアップを将来会社の仕事に還元できる、または政府の働き方改革に沿った制度を会社が取り入れるきっかけになる、など、何かアピールできることを探してみましょう。
勤務を減らすことによる社会保険への影響は?
勤務を減らすことにより、収入だけでなく社会保険にも影響が生じます。
厚生年金への影響
収入が減ることで、厚生年金保険料も比例して減ります。
しかし一方で、将来もらえる老齢年金も減ることになります。
これは、老齢年金の支給額が在職中の給与・賞与の平均額(正確には平均標準報酬月額と言います)に基づいて計算されるからです。
もし老齢年金の減少を避けたい場合は、短時間勤務の期間中にイデコや私的年金などでの埋め合わせを検討すべきでしょう。
健康保険への影響
厚生年金と同様に、健康保険の保険料も比例して減ることになります。
また、たとえば健康保険の高額療養費の自己負担分が減るなど、保険料負担以外の部分でも負担が減少します。
厚生年金とは違い、健康保険の場合は働き方を変えたからと言って、決められたサービス内容が変わることはありません。
ただし、働き方によっては健康保険の脱退要件(1か月の所定労働日数が正社員の4分の3を下回る、または(大企業などの場合)週の労働時間が20時間を下回る)にかかってしまう場合もあるので、注意が必要です。
また、収入の減少によって(手当や賞与を除く)1か月の賃金が8.8万円未満になった場合も同様に社会保険の加入要件から外れる可能性があります。
このような場合は配偶者の扶養に入るか、国民健康保険への加入を検討する必要があります。
勤務を減らすことで不利にならないために
勤務を減らすことで、仕事だけに捉われず、自分や家族のために時間を使えるようになり、自分の自己研鑽やリフレッシュ、そして家族の幸せにもつながります。
ただし、検討を始めてみると、確認しておかなければならないことが山ほど出てくるので戸惑うこともしばしばです。
そんな時は、是非このブログを参考に、上司や勤務先の担当部門への確認作業を進めてみてください。