「こつこつ」が苦手な人は、「コンコン」投資から始めてみては?
先日、とある証券会社の分散投資に関するオンラインセミナーを聞いていると、社員講師の方が「こつこつ」という単語を連発していました。
「だ・か・ら、こつこつ貯めることが大切なんです!」
「みなさん、こつこつ積み立てておけば、リスクにおびえることはないんです!」
その回数、45分のセミナー中20回以上はあったと思います。
それを横で聞いていた妻がつぶやきました。
「だ・か・ら、みんなこつこつ貯められないから困ってるんじゃない!!」
銀行や証券会社が積立運用を勧めるワードとして多用される「こつこつ」。
私は普段から何かしっくりこないものがあったので、「こつこつ」の意味を辞書などで調べてみました。
こつこつ、とは「兀兀」、(または「矻矻」)と書きます。
円周率を示す「π」(パイ)にそっくりですが、これも立派な漢字です。
元々、「兀」の字は、その字の上部が示すように「平らな地勢」を表したものです。
そこから派生して、「兀兀」は次のような意味を持っています。
(1)坐禅の不動なるさま
「仏教語読み方辞典」(有賀要延編、国書刊行会)
(2)一心に努力するさま
とあります。 また、古代漢字研究の第一人者であった白川静博士著「字通」(平凡社)によると、
兀兀とは、「ひとり困苦して勉めるさま」とあります。
坐禅、努力、困苦と、どれも楽ではない厳しいイメージが浮かびます。
つまり、何かを「こつこつ」続けるには、相応の労力が必要なのです。
それを資産運用の営業トークに多用するのは逆効果と考えるのは私だけでしょうか。
(私の妻と同じように)こつこつなんて無理、と逆に資産運用から遠ざかる人もいるはずです。
もし私が売る立場なら、もう少し別の表現を使います。
「いっぽいっぽ」とか、「すこしづつ」とか。
「ポレポレ」(スワヒリ語で「ゆっくり」の意味)も面白いかも知れません。
でも、投資未経験の方に私が本当におすすめしたいのは、「こつこつ」ではなく、「コンコン」投資です。
とはいえ、何も難しいことはありません。
コンコン投資のイメージは、「洞窟の壁をコンコンと杖で打ち、確かめながら慎重に進んでいく」方法です。
最初は誰でも未知の資産運用に手を出すのは不安なもの。
ましてや、「今後長期に渡って毎月積み立て」と言われても、近い将来に家計の余裕がなくなるかも知れない。
それならば、まずはごく小さな金額を元手に始めてみる。
そして1か月後に、自分の財布や気持ちをもう一度確かめてみる。
大丈夫そうなら、そこに小さな金額を追加してみたり、全く別の運用商品や手段を試してみる。
運用そのものが無理そうなら、諦めてもいい。
こんな始め方もあるのではないかと思います。
最初から、(修業的イメージの)こつこつで投資資金を作ってそれを何十年と長期に積み立てて!と言われても、腰が引けますよね。
もし、つみたてNISAやイデコに不安がある方は、まずは「コンコン」投資を始めてはいかがでしょうか。