相続した別荘地を処分したい! 梅宮アンナさんとSさんのケースから売却の秘訣。
相続した不動産をどうするか。
引き継ぐ本人にとってその物件に利用価値があればよいのです。
しかし、そうでない場合は問題です。
そんな相続を経験した、梅宮アンナさんとSさんの2人のケースから、その対処法を探ってみます。
梅宮アンナさんのケース
タレントの梅宮アンナさん。
お父様の梅宮辰夫さんが生前に建てた別荘の維持と売却で大変な苦労をされた、という記事が話題となっています。
神奈川県の最西部にある真鶴半島。
そこに建つ白壁の瀟洒な4階建ての別荘は700坪と敷地面積も広大です。
かつて「くいしん坊!万才」の6代目レポーターを務め、漬物チェーンを展開したほどの料理好きである梅宮辰夫さん。
45歳の時に建てた真鶴の海を一望できる別荘で、料理の腕を存分に振るったと言います。
しかし、本人にとって理想な家が、家族にとって最適とは限りません。
事実、真鶴はスーパーや病院も遠く、身近な友達もいません。
さらに、別荘の維持費は固定資産税だけでも年間400万円。
高齢のお母さま(クラウディアさん)の負担もあり、アンナさんは売却を決意します。
『負』動産を抱えたSさんのケース
<以下、特定の個人が推定されないよう配慮しています。>
Sさん(60歳、男性)は、私が相続から不動産の売却サポートまで一貫して担当したお客様です。
今から4年前。
お母様が亡くなり、Sさんは軽井沢にある約400坪の土地を相続しました。
この別荘地、元々は約45年前に「夢の別荘地がお値打ち価格であなたのものに!」というキャッチコピーに惹かれて20年前に亡くなったお父様が購入したものでした。
しかし、いざ購入するとそれで満足してしまい、お父様はその土地に建物を建てることはなく、お母様が相続した後もずっと放置したまま。
Sさんはお母さまの生前から、その別荘地の存在は知っていました。
しかし、現地を訪れたことは一度もなく、別荘にまったく興味はありません。
そこで、現地の不動産屋にそれとなく、土地が売れるのかどうか聞いてみることに。
しかし、その返答はすげないものでした。
「周りの土地だって余ってるし、売るのは難しいと思いますよ。」
さらに頭を悩ませたのは、今後起こるであろう自身の相続でした。
Sさんはずっと独身。
もし自分に万が一のことがあれば、唯一生存している肉親の弟が全ての財産を引き継ぐことになります。
しかし、これも別荘地である八ヶ岳に住む弟は、会うたびにこう嘆くばかり。
「なあ兄貴、別荘地なんて買うもんじゃないよ。 土地を売りたくても売れない住人が周りにごろごろいるし、相続を断られる人だっている位だ!」
そんな弟に、45年も放置した別荘地を新たに押し付ける訳にも行かず、困り切っていました。
しかし、事態はあるきっかけで思わぬ方向へ動きます。
相続から4年が経ったある日。
見知らぬ不動産会社から1通の手紙が届きました。
そこには、こう書かれていました。
「貴殿がお持ちの土地に興味を示されている方がいらっしゃいます。 もし売却などをお考えでしたら、一度お話を聞かせて頂けないでしょうか。」
負動産を売却できた4つのきっかけ
梅宮アンナさんとSさん。
相続で引き継いだ不動産は、元々購入したお父様にとっての、理想の物件でした。
しかし、相続した側にとってはそうではありません。
「故人の『富』動産が、遺された家族の『負』動産」になってしまったのです。
それでも、困難を乗り越え、最終的に二人は売却することができました。
その秘訣は何だったのでしょうか?
1.信頼できる不動産業者との出会い
梅宮アンナさんは当初、自力で買主を見つけようとします。
買主の条件は、「きちんと個人が自分たちのために使って、気持ちを休めに来る家として使ってくれる方」
しかし、自分1人で対応するには限界がありました。
「不動産屋さんが間に入らないと絶対ダメ!」
そこで、真鶴の土地と風習を熟知した、キャリア45年のベテラン不動産業者Tさんと出会います。 そこから、売却へ向けて大きく歯車が動き出します。
やはり、別荘地の売却にはこうしたプロフェッショナルのサポートが欠かせません。
2.不動産業者の入念な人選
一方のSさん。
手紙を送ってきた主は、軽井沢周辺を専門に扱っている不動産業者Mさんでした。
しかしキャリアは浅く、知名度もないことから信用していいものかSさんは迷いました。
そこで、私に「真に信頼できる業者探し」を依頼します。
私はMさんに加え、3つの大手不動産会社の担当者にそれぞれコンタクトし、見積もりを出してもらった上で、「どれだけ周辺の土地に知識と経験があるか」、「販売力があるか」、「親身になってもらえるのか」の3点を徹底比較しました。
その結果、当初のMさんが最もふさわしいと判断し、話を進めていくことになりました。
最初から信頼できる不動産業者を見つけるのは、伝手でもない限り難しいものです。
そこで、まずは複数の業者に当たりをつけて、見積もりなどを徹底比較することをお勧めします。
もし自信がなければ、業者の選定から不動産に詳しい専門家に任せる、というのも手です。
3.売却の条件をはっきりと伝えること。
梅宮アンナさんは、買い手の条件として前述の「きちんと個人が自分たちのために使って、気持ちを休めに来る家として使ってくれる方」以外にも、こんな条件を出しました。
・建築からの経過年数だけで判断しない人
・(ローン購入ではなく)キャッシュで買える人
・リビングからの景色を高く評価してくれること。
この結果、不動産業者Tさんが見つけたのは、偶然にもかつて東京で暮らしていた時にお母さまとお付き合いがあった、資産家のご夫婦だったそうです。
梅宮さんはこのご夫婦に安心して別荘を売ることができました。
一見、条件が多いと売却が難しくなるように思えます。
しかしTさんにとっては、却って理想の買主を見つけやすくなり、梅宮さんと価値観を共有できる買主を見つけることにつながった、とも言えます。
4.今の状況だけで判断しないこと。
Sさんは、相続からしばらくの間、売却をすっかり諦めていました。
写真に写る物件の現場は、草木が無秩序に生い茂り、前面の未舗装道路は崩落寸前。
売れる訳はない。
そう思っていました。
しかし、予想だにしなかった事態が起こり、状況が一変します。
コロナウィルスの蔓延です。
首都圏からのリモートワーク需要で軽井沢を始めとする別荘地が人気を集めます。
その結果、荒れ放題だったSさんの土地に興味を示す買い手が現れ、念願の売却につながりました。
このように、偶然、とも思えることが不動産売買には起こります。
今の状況だけで判断せず、諦めずにじっと待つことも大切です。
時を待ち、信頼できるパートナーを見つける。
長年売却もできず、お荷物となった不動産は、「負」動産とも、「腐」動産とも呼ばれます。
しかし、梅宮アンナさんとSさんのケースのように、優秀なプロフェッショナルとの出会いや、予期せぬ社会環境の変化で、一転売却につながることもあります。
諦めず時を待ち、信頼できるパートナーを見つけること。
それが、負動産を売却する上でのとても大切なポイントです。