アメリカが5回目の利上げ。 ハイリスクのポイント運用は続けるべき、それとも止めるべき? 

PayPayのポイント運用に積極的な妻から、こんな質問を受けました。

「アメリカの金利が上がっているらしいけど、このままポイント運用続けていいの?」

アメリカの金利!

普段は経済ネタをほとんど口にしない妻から、まさかこんなワードが出るとは思いませんでした。

「虎の子」のポイント消滅危機の前では、もはや無視できなくなったようです。

果たして、このままポイント運用を続けるべきか、それとも止めるべきでしょうか?

ポイント運用とは

(既にご存知の方は、この項を飛ばしてください)

ポイント運用は、その名の通り、クレジットカードやQRコード決済などを使って買い物をするともらえるポイントをそのまま運用できる疑似運用体験サービスです。

あくまで「疑似体験」なので実際の株式や投資信託の投資とは違いますが、運用したポイントの残高は、株式や投資信託の値動きに応じて増えたり減ったりします。

さらに、以下のメリットもあり、手軽に運用を始めることができます。

1.口座開設手続きが不要
2.ポイント運用で得た利益が非課税(注1)
3.手軽に出し入れ自由

注1 2022年9月現在。 現行の法制度では、ポイントがあくまで商品・サービスに対する「値引き」として扱われるため。 しかし、将来的に制度が変わる可能性があります。

このサービスを始めたのはクレディセゾンです。

「永久不滅ポイント運用サービス」として、2016年12月に開始しました。

それ以来、Paypayを始め、携帯会社や証券会社、信販会社などが次々と参入しています。

ハイリスク・ハイリターンの「チャレンジコース」

Paypayのポイント運用は、2022年9月現在、次の4種類があります。

PPSCインベストメントHPより筆者が加工、作成

この4つのコースの中で、最もハイリスク・ハイリターンの運用が「チャレンジコース」です。

同コースの特徴は、参照する指標が「レバレッジ型ETF」である事です。

「レバレッジ型ETF」とは、通常の株式市場における値動きの2倍もしくは3倍で変動するもので、チャレンジコースが参照する「Direxion S&P500ブル3倍」は、米国を代表する企業500社で構成される「S&P500」の指標が1%動くとブル3倍では3%動きます。

こうしたリスクの高い商品のため、短期運用で大きく利益を狙う場合に使われるのが一般的です。 

「0になってもいいや」と始めた残高は、それでは済まないレベルに

ちなみに、妻は入ってきたポイントの全てを「チャレンジコース」で運用しています。

始めた当初はハイリスクであることは承知していましたが、

「おまけで入ってきたポイントだから、失って0になっても気にしない」

と、あまり深く考えていませんでした。

しかし今では残高が「まあいいや」では済まないレベルになってきました。

そこで、冒頭の質問となったわけです。

アメリカの「利上げ」によりチャレンジコースはマイナス40%

それでは、本題に入りましょう。

アメリカの「利上げ」は、「チャレンジコース」の値動きにどれだけ影響しているのでしょうか?

その前に、「チャレンジコース」の参照指標である「Direxion S&P500ブル3倍(SPXL)」の米ドルベースでの値動きを見てみましょう。  

下のグラフは、過去1年間の変動率を表しています。 1年前の2021年9月16日を1として、これまで何%動いたかが一目で分かります。

1年前と比較すると、指標は約40%も下落。

これでもやや戻した方で、2022年6月の下落率は50%にも達していました。

これでは誰もが心配になるレベルです。

一体なぜこんなに下がったのか。

その要因が、米国の「利上げ」です。

今年に入って米国は5回も利上げ

今年(2022年)に入ってから本記事執筆時点(9月22日)、アメリカの中央銀行は計5回も利上げを行っています。

その結果、わずか半年ほどの間で金利は3%も上昇しました。

これだけの短期間での上昇幅としては極めて異例です。

では、それぞれの利上げに対して、チャレンジコースの参照指標はどのように反応したのでしょうか。 

前述のグラフに当てはめると一目瞭然です。

1回目の利上げからは急激に下がり、その後上下はあるものの、全体としてはずっとマイナス。 急激かつ複数の利上げがいかに指標を下げたかがよく分かります。

利上げによるマイナスを打ち消す「円安ドル高」

米ドル建ての運用では、金利に加えて運用成績を左右するものがあります。

それが「為替」です。

通常、円高ドル安になれば値が下がり、円安ドル高になれば値が上がります。

そして、これはチャレンジコースの元となる指標にも当てはまります。(注2)

(注2)Paypay運用を行う会社のHPにも、目立ちませんが記載があります。

Q 為替の影響を受けますか?

A: はい。お客様が選んだコースの参照資産の価格が変動しなくても為替が変動すると価格が変動します。 お客様が選んだコースの参照資産の価格が変動しなくても円高になると評価額が小さくなり、円安になると評価額が大きくなります。

Paypayインベストメント よくある質問(運用について)より。

より分かりやすくチャレンジコースの動きを知るために、「金利の動き」「為替の動き」の関係を次のように整理してみます。

「利下げ」で「円」なら、プラス

「利下げ」で「円」なら、ニュートラル

「利上げ」で「円」なら、ニュートラル

「利上げ」で「円」なら、マイナス

表にすると、次のような関係になります。

為替の影響を加味すると、1年間の変動率はマイナス26%

さて、最近の現状はどうでしょうか?

金利は「利上げ」が続き、為替は円安ドル高。

上の表に従えば、指標への影響はニュートラルです。

具体的な影響は、グラフで見るとはっきりします。

下は、為替の変動を加味したグラフです。(注3)

注3 チャレンジコースの値動きに使う「円ベースの指標」は公表されていないため、便宜上、ドルベースの指標にドル円の為替レート(TTM、終値)を掛けたデータを元に、グラフを作成しています。

円安ドル高の影響を加味した「円ベース」では、対前年の変動率はマイナス26%となりました。 

「ドルベース」のマイナス40%よりは改善しましたが、利上げの影響が大きすぎて依然マイナスのままです。

ここからも、利上げがいかにチャレンジコースの指標を下げたかがよく分かります。

チャレンジコースは避けた方が無難。

さて、ここまで米国の利上げがPaypay運用のチャレンジコースに与える影響を見てきました。

ここまでの説明を読んで「やっぱりコースはやめておこう」と考える方は、賢明だと思います。 

その理由は、とにかく変動が大きすぎる。 その一言に尽きます。

利上げが5回もあったとは言え、1年で残高が26%も減少する運用はおすすめできません。  

なお、チャレンジコースに多額の残高を抱える妻には、「敢えて損切りする必要はないけど、ずっと先にもし値を戻したときは、別のコースに変えた方がいいよ。」と伝えています。

とは言え、年内には追加利上げ、そしてこの先来るであろう企業の業績悪化など、楽観はできない状況です。

いつ売れるようになるか、まではさすがに妻に断言できません。

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