再婚を考えるひとり親が「入籍しない」場合のメリット・デメリットとは?

(本記事は本人が特定されないよう、配慮しています。)

ひとり親のRさん(女性)は、ある悩みがありました。

それは、1年前から結婚を前提に付き合っている「」のことです。

悩みのタネは、「結婚のタイミング」

お互いの意見が食い違っています。

Rさんの希望は「今すぐにでも結婚。

一方の「彼」は慎重です。

少なくとも(今は中学生の)Rさんの娘が大学生になるまでは籍を入れない方がいい、と考えています。

「なぜ?」

Rさんは、何度も「彼」に尋ねました。

しかし、返ってくる答えいつも同じ。

「その方が得だから。」

一体何が得なのか、Rさんには合点が行きません。

そこで、Rさんのような「ひとり親」の方が入籍せずにパートナーと関係を続ける場合の、財産面での主なメリットとデメリットを解説します。

入籍しない場合のメリット

1.ひとり親向けの手当や貸付が引き続き受けられる。

二人親に比べて一般的に家計が厳しくなると言われる「ひとり親」世帯のために、国や市町村がさまざまな支援制度を設けています。

主なものとして以下の制度(市区町村独自の制度も含む)がありますが、入籍した場合、「ひとり親」ではなくなるため対象外となってしまいます。

・児童扶養手当

・児童育成手当

・母子父子寡婦福祉資金貸付金制度

・ひとり親への住宅費助成

・ひとり親家庭の医療費助成制度

では入籍は当面あきらめたとして、一緒に暮らし始めた場合は、支給は継続されるのでしょうか?

答えはNOです。

入籍しなくても、同居して住民票を移すなど「事実婚」に相当する場合は、支給対象外となってしまいます。

例えば、児童扶養手当が「支給されない場合」の例として、以下のように規定されています。

次のような場合は手当は支給されません。

・ 請求者及び児童が、日本国内に住所を有しないとき。
・ 自動が児童福祉施設などに入所したり、里親に委託されたとき。
・ 父、母又は養育者が婚姻の届け出はしなくても、事実上の婚姻関係(内縁関係など)があるとき。

出典: 横浜市HP 「児童扶養手当」

従って、入籍しない場合であっても、事実婚に該当するような行動を考えている場合は、これまで受けている手当や貸付が対象外にならないかどうか、慎重に検討する必要があります。

2.養育費を守ることができる。

入籍した場合と比べて「ひとり親」のままでいる方が、元配偶者から受け取っている養育費を減額される可能性は低くなると言えるでしょう。 

逆に、入籍した場合は夫婦相互に扶養義務が生じるため、養育費の減額につながる可能性が高くなります。

ただし、入籍したことが養育費の減額につながる訳ではありません。

実際にその可能性が高くなるのは、以下の場合です。

1.元配偶者に再婚が知られる可能性がある。

ただし、入籍したり養子縁組した事実を元配偶者に報告する義務はありません。

2.子どもを養子縁組する予定がある。

連れ子と新たな配偶者が養子縁組すると、新たな配偶者には連れ子に対する養育上の義務が発生します。 もし、養子縁組の事実が知られた場合、元配偶者による養育費の減額請求が認められやすくなる可能性があります。

3.元配偶者の年収が低い、または再婚して子どもがいる。

これも、元配偶者が養育費の減額を請求する動機になりえます。

入籍しない場合のデメリット

1.税金上の控除が受けられない。

私たちが支払う所得税や住民税の計算上、税額を減らす効果がある各種の税額控除。

しかし、以下の控除は、対象となる配偶者が「民法上の規定に基づく婚姻関係」にあることが前提です。 

従って、ひとり親のままではこれらの控除の対象となりません。

・配偶者控除

・配偶者特別控除

・医療費控除

たとえば、配偶者控除の場合、入籍していれば38万円(一般、かつ合計所得900万円以下の場合)の控除を受けることができます。

しかし未婚や事実婚では控除できません。

また、医療費控除は、通常10万円以上の医療費がかかった場合、本人及び同一生計の家族が支払った医療費も合わせて控除することができます。

しかし、未婚または事実婚の配偶者が支払った医療費を、本人の医療費に含めて控除することはできません。

このように、税制面では「ひとり親」のままだと不利になることがあります。

2.相続権がない

もし、未婚のまま本人が亡くなってしまった場合、遺された未婚または事実婚の配偶者は、本人の財産を相続する権利がありません。

ただし例外があります。

それは、1.特別縁故者として認められる、または2.遺言書などで受遺者として指定されている場合です。

1の「特別縁故者」とは、亡くなった方と特別に親しかった人を指す言葉です。

被相続人と長年同居していた、献身的に介護していた、金銭的援助を受けていた、などの方が該当し、家庭裁判所から認められることで、初めて特別縁故者となることができます。 

しかし特別縁故者として認められるのは、「他に相続人がいない」場合のみです。

従って、被相続人に親や兄弟がいる場合、特別縁故者になることはできません。

2の場合、パートナーが生前に遺言書を準備し、配偶者が財産の一部または全部を受け取る権利がある旨を記載していれば、遺産を相続することが可能です。

ただし、元々相続権のないRさんが、遺言状で指定されているとは言え多額の財産を引き継ぐことに、他の相続人が納得するかは別問題です。 

また、他の相続人の遺留分を侵害している場合、争いになる可能性も捨てきれません。

姓のことや、親族との関係など、入籍するしないの判断材料は多い。

ここまで、「籍を入れない」ことの主なメリット・デメリットを解説しました。

ただし、籍を入れるか入れないかの決め手は、通常、これまで記載した「財産面のメリット・デメリット」だけではありません。

例えば、別姓を維持するのか、それともどちらかの姓に合わせるのか。

また、相手の家風や親族との関係に馴染めるのか。

子どもは再婚後の生活についていけるのか。

など、考慮すべきことは山ほどにあります。

慎重かつ時間をかけての検討と話し合いが必要です。

なお、Rさんの場合、「彼」がこうした考慮すべき点を踏まえた上で、入籍しない方が得と判断したのか、それとも、単なる言い逃れなのか。

それは今も分かりません。 

ただし、特に相続の面では自身の子供への相続にも将来的につながる話。

現在も粘り強く、彼との話し合いを進めています。

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