なぜ、節電しても電気代が上がる?(燃料費調整額のしくみ)
節約しても電気代が上がる?
毎年電力代が高くなる夏。
我が家も例年以上に「節電」に励んでいます。
リビングの電気はこまめに消し、ダイニングの電気で間に合わせたり。
少しでも風がある日は首に濡れタオルを巻いて、そよ風に当たったり。
仕事も深夜までせず、早く寝て早朝にこなすようにしたり。
その努力が実り、電気の使用量は昨年より2割ほど下がりました。
しかし、電気料金は逆に3%上がる結果に。
我が家の電気料金の推移。 使用量(青線)は下がったのに、電気料金は上がっている。
「なぜこんなことに?」
私以外にも、このような疑問を持つ方は多いのではないでしょうか?
その答えは、「燃料費調整額」がマイナスからプラスになっているからです。
燃料費調整額とは?
ここで、燃料費調整額とは何かについて簡単に解説します。
これは、いわば「燃料価格が上がったときに、電力会社が電気料金にその上昇分を転嫁するための仕組み」です。
今から26年前の1996年に始まった制度で、火力発電に使われる石油、LNG、石炭の「基準価格」と現在の価格(3か月平均)を比べ、上がっていれば電気料金にプラス(加算)、下がっていればマイナス(減算)されます。(計算式は省略します)
毎月の電気料金明細にも「燃料費調整額」は記載されていますので、お持ちの方はチェックしてみてください。
今年と去年の燃料費調整額を比べると…
今年の6月と昨年の6月の東京電力管内の燃料費調整額(単価)を比べると、このようになります。
2022年6月 +2.97円/kWh
2021年6月 ̠▲3.29円/kWh
昨年の数字はマイナスなのに、今年はプラスになっています。
つまり、昨年は、燃料費調整額が電気代から「差し引かれた」のに、今年は「付け足された」ことになります。
こうなった理由は、火力発電の元になる「原油」、「LNG」、「石炭」の価格が上がっているからです。 そしてその理由は、新型コロナ明けの景気回復によるエネルギ需要の急上昇やロシア・ウクライナ問題などの影響です。
燃料費調整額は今後も上がり続ける?
では、今後も原油などの価格が上がり続ければ、燃料費調整額もどんどん上がり続けるのでしょうか?
いまだウクライナ問題は解決の糸口さえ見えず、ロシアは日本への報復として、日本も参加しているLNG権益(サハリンII)を接収しまう恐れも出ています。 今後もエネルギー価格が上昇すれば、家計への負担がさらに増えてしまいます。
実は燃料費調整額には一定の「上限」があります。 際限なく増えてしまうことは、
「今のところ」ありません。
ここで、「今のところ」としたのは、最近、電力会社の一部にこの上限を撤廃する、という動きが出ているからです。
一部の電力会社は燃料費調整額の上限を撤廃
2022年7月26日現在、電力会社は計739社あります。(資源エネルギー庁 登録小売電気事業者一覧より) この中には、東京電力や関西電力のような大手から、地元密着の小さな電力会社まで様々含まれています。
電力の小売り自由化によって、電力会社がこれだけ増えた訳ですが、エネルギー価格が上昇している現在、特に中小の電力会社は厳しい経営環境に直面しており、経営を維持するために上限撤廃に踏み切っているのが現状です。
例として、自然エネルギー発電を主とするLoopでんきは1月時点で撤廃に踏み切っています。 また、燃料費調整額は維持したまま、別名目(たとえば電源開発費など)のコストを電気料金に上乗せしている会社もあります。
では、大手電力会社の今後の動きはどうなるのでしょうか?
燃料費調整額の4割強はLNG価格に左右されますが(為替の変動を含む)、このLNG価格は7月に入ってから高騰を続けています。
そんな中、大手の東京ガスは、ガス料金に含まれる燃料費調整の上限撤廃を発表しました。
このままLNG価格の高騰が続き、かつ政府の「節電キャンペーン」が想定通りに行かなければ、大手電力会社の燃料費調整額上限撤廃も、時間の問題かと思われます。
電気料金見直しの際は、「燃料費調整額」に注意を!
この夏、「燃料費調整額」は覚えておいて損のないワードです。
電気のプラン変更を考えている方は、特に注意です。
プラン料金は安くなっても、「燃料費調整額」は上限撤廃されていて逆に前のプランより高くなった、ということもあるからです。
政府も後押しする「節電」。
せっかく節電しても燃料費調整額で「相殺」されてしまうと努力が無駄になった気もしますが、世界的な燃料価格上昇はどうすることもできません。
私は明日からもまた、地道に電気を消す日々が続きそうです。
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